
外国のパパってどんな子育てしているの? 世界の人々からみた日本での子育ての印象は? 
子育てを取り巻く社会の変化についての専門家の展望とともにお届けします。 
専門家:榊󠄀原洋一(お茶の水女子大学名誉教授 小児科医)
【目次】
・世界のパパの育児への関わり方は?
・日本での子育てのよいところは?
・日本での子育てで不安なことは?
世界のパパの育児への関わり方は?
カナダ出身のパパ&日本出身のママ(カナダ在住) 
・パパ 日本に“イクメン”という言葉があると聞いてとても驚きました。父親が子育てや家事をするのは当たり前で、やらなかったら離婚問題につながりかねません。また、夫婦二人の時間も大切と考えられていて、祖父母などに子どもを預けて二人だけでディナーに行くことも一般的です。 
・ママ 父親ひとりで子どもとランチしていたり、ベビーカーを押していたりする姿をよく見かけます。カナダでは、1世帯につき1年間の育児休暇をとることができるのですが、「最初の半年をママ、後の半年をパパ」のように自由に割り振ることができます。父親が育休をとることも珍しくありませんし、とりにくい雰囲気もありません。 
アメリカ出身のパパ&日本出身のママ 
・ママ カナダと基本的に同じですが、日本とは前提が違うような気がします。日本では、父親にとって子育ては“手伝う”感覚が多いと思います。アメリカでは、二人で子育てするのが当たり前なので、そこに“手伝う”や“積極的”という感覚はありません。 
フィンランド出身のパパ&日本出身のママ 
・ママ 例えば、妊娠のときの検診は必ずパートナーと行きます。そのとき、仕事を中抜けできるシステムがあります。産んでからも育休をとるのが一般的で、父親休暇は9週間あります。 
・パパ 子どもが産まれたときに2週間、ママの職場復帰後に7週間の育児休業をとりました。以前から父親が休むことはありましたが、育児休業の期間は少しずつ延びてきています。
中国出身のパパ&ママ 
・ママ かつて、男性はほとんど育児に参加していませんでしたが、最近は父親の育児参加が増え、とてもうれしいことだと思います。私が子どものころ、母親は専業主婦ではなく仕事をしていましたが、父親が育児をすることはなかったと思います。 
全体的には二人で育てる方向へ
明治時代、イザベラ・バードというイギリスの旅行家が日本の東北地方を訪れ、「父親が子どもたちをだっこして育てていることに驚いた」と書き記しています。日本にもかつてはそんな時代があって、その後、母親が育てることが多くなり、現在は「二人で育てよう」という空気が醸成されてきている。国や地域によってペースが少しずつ違いますが、全体的には二人で一緒に育てる方向に進んでいると思います。(榊󠄀原洋一さん)
日本での子育てのよいところは?
中国出身のパパ&ママ 
・ママ 保育園がとても便利です。中国では、幼稚園は多いけれど、3歳より小さい子どもを預ける施設がほとんどありません。あっても費用が高額です。 
フィンランド出身のパパ&日本出身のママ 
・パパ 集団行動など、みんなで協力しあって、一緒にがんばる感じがよいなと思います。
アメリカ出身のパパ&日本出身のママ 
パパ とにかく安全なこと。子どもが一人で電車に乗っていることがありますが、アメリカでは絶対に目にすることができない光景です。 
ママ パパは、ひな祭りやこどもの日など、子どものための行事が多いことをすごく喜んでいます。アメリカでは、子どものお祝いといえば誕生日しかありません。
日本での子育てで不安なことは?
フィンランド出身のパパ&日本出身のママ 
日本はフィンランドに比べて学校の宿題が多いと聞きます。子どもが大きくなって学校に行くようになったとき、のびのび遊ぶことができる時間が少ないのではないかと心配です。日本でも、のびのび育てたいという理想はあると思いますが、日本の小学校・中学校は他の国と比べて忙しいのですか?
日本は宿題が多いと言われている
もちろん国によって違いますが、日本は実際、宿題の量が多い方といわれています。基本的に宿題がない国もありますし、少ない国もあります。時代の流れや制度によって変わってくると思います。(榊󠄀原洋一さん)
アメリカ出身のパパ&日本出身のママ
中学校や高校では「みんなが同じでなければいけない」「全員が厳しい校則を守らなければならない」と聞きます。もし、自分の子どもが創造的なタイプで、“他の人の期待通りではなく自分の希望を通したい”と思ったときにどうなるのか心配です。 
日本の教育も変わってきている
現在、文部科学省や教育の専門家は「創造的な子どもを育てるためには、詰め込みではないほうがよいのではないか」と考え、社会情動的スキルの重要性、アクティブ・ラーニング(能動的に学ぶことができるような学習方法)の導入などについて真剣に議論されています。現時点ではまだ一斉授業が多いですが、日本の教育も少しずつそういう方向に進んでいくと思います。子どもの特性に合わせた学習システムが選べるようになっていくのがよいと思います。(榊󠄀原洋一さん)
今後、多様性を認める世界へ?
文化や社会、背景や時代によっていろいろな違いがあります。日本でも、いろいろな国の方が多くなってくると、多様性が増えてきます。このとき「どちらがいい」ではなく、コミュニケーションをして、それぞれの社会や文化、考え方の違いを認めていくことが大事です。「日本では、日本のやり方に従う」といった堅苦しい考え方ではなく、それぞれを取り入れて、いろいろな選択肢があるような方向に進んでいくとよいですね。日本だけではなく、世界中がそうなっていきますように。(榊󠄀原洋一さん)
©NHK
※本記事は、 NHK 「すくすく子育て」のホームページの記事を元に構成・編集・加筆しています。記事を読んでもっと知りたいことがありましたら、ぜひ「マムアップパーク by 健幸スマイルスタジオ」にご参加ください。お待ちしています!
※記事の内容や専門家の肩書などは2024年7月当時のものです。
