最近、増えている日本に住む外国出身のパパ・ママ。
しつけのしかたは日本と違いがあるの? 子育てを取り巻く社会の環境は?
気になる世界の子育てについて聞きました。 

専門家:榊󠄀原洋一(お茶の水女子大学名誉教授 小児科医)

【目次】
祖国と日本のしつけに違いを感じる?
子連れ家族への社会のサポートは、世界と日本でどう違う?

祖国と日本のしつけに違いを感じる?

フィンランド出身のパパ&日本出身のママ 
パパ ママが娘を怒っているところを見ると、しつけの違いを感じることがあります。日本では「他人に迷惑をかけないように」と、小さい子でも厳しめですが、フィンランドなどのヨーロッパでは、そこまで厳しくないように思います。例えば、電車で座っていて、子どもの足がとなりの人にぶつかったら叱りますが、走り回るぐらいでは叱りません。私が子どもだった30年ぐらい前は、フィンランドでも厳しい面がありましたが……。 
ママ フィンランドでは、「子どもは見守る」という部分が多く、パパから見ると、私がいつも怒っているように感じるようです。 

アメリカ出身のパパ&日本出身のママ 
パパ アメリカでは、子どもが何かうまくできたら、手をたたいて「イェーイ!」と歓声をあげます。そうすれば、子どもはうれしくなって「またやりたい」と思う。子どもが悪いことをしたら、“タイムアウト方式”がとられます。少しの間、部屋の隅や自分の部屋で、子どもをひとりにするんです。この時間に、子どもは自分が悪いことをしたと気づくのです。 

中国出身のパパ&ママ 
ママ 中国では、子どもを叱るとき、「どうして○○をしたの?」のような質問形式が多く、どこが悪いのかをちゃんと説明してあげます。私が子どものころは褒められることは少なかったですが、今は、具体的に何がよいのかを伝えて褒めています。全体的には、褒めるより、叱る割合が少し多いと思います。

文化、社会的背景、時代、家族によって考え方が違う

「親は子どもに何を望むのか」を日本とアメリカで調査したところ、日本では「協調性」、アメリカでは「独立心」を望む親が多くいました。
アメリカでは「自分で決める子になってほしい」と考える親が多いわけです。そこには、文化や社会的背景があると思いますが、その上に個人差や時代による変化があります。
中国では、かつては「厳しく育てる」でした。ですが、中国の幼児教育の学会などで話を聞くと、厳しくするより子どもの意見を聞いてあげるほうが、子どもがよく育つことがわかってきて、最近は褒めてあげるようになってきているといいます。(榊󠄀原洋一さん) 

子連れ家族への社会のサポートは、世界と日本でどう違う? 

カナダ出身のパパ&日本出身のママ(カナダ在住) 
ママ カナダでは、社会も人も子育て世帯にとても寛容で、協力や配慮を日常生活のちょっとしたところで感じることができます。例えば、バスには、イスを畳んでベビーカーをそのまま乗せることができるスペースがあります。その席を快く譲ってくれるのは当たり前のことで、ラッシュ時でも同じです。譲ってくれない場合も、周りの乗客が「ベビーカーがいますよ」と声をかけてくれます。町全体が親戚のような感じです。 

アメリカ出身のパパ&日本出身のママ 
パパ 私の出身のニューヨーク市では、みなさん子連れ家族を気にかけてくれますが、席を譲ってくれるかどうかは地域によります。市の中心部やクイーンズ地区北部なら「ここに座って」と言ってもらえます。 

フィンランド出身のパパ&日本出身のママ 
パパ 子連れ家族は、いろいろな場面で助けてもらえます。ベビーカーでバスに乗るときは親も子も無料です。東京の電車では、赤ちゃんを抱いていても優先席を譲ってもらえないことがあり驚きました。 
ママ フィンランドでは、産まれる少し前に「アイティウスパッカウス」というダンボールに入った育児グッズを各家庭に届けるシステムがあります(※1)。 
※1 フィンランド社会保険庁が支給しています。育児グッズおよそ50点が入ったパッケージが、妊婦健診を受けたすべての妊婦さんにプレゼントされます。育児グッズか現金支給かを選択できます。 

中国出身のパパ&ママ 
ママ 地域のみなさんは子連れ家族に親切で優しいです。席を譲ってくれるなど、いろいろなことで助けてくれます。

国による違いに加え、都市部と地方の違いもある

都市部では「声をかけないほうがお互いのため」という個人主義の考えもあって、気遣う気持ちはあっても、行動には移さないところがあると思います。日本でも、昔から地方では、みんなが話しかけてくれたり、子どもがいると声をかけてくれたりするような文化がありました。その差が表れていると思います。 (榊󠄀原洋一さん) 

(②に続く)

©NHK
※本記事は、 NHK 「すくすく子育て」のホームページの記事を元に構成・編集・加筆しています。記事を読んでもっと知りたいことがありましたら、ぜひ「マムアップパーク by 健幸スマイルスタジオ」にご参加ください。お待ちしています!
※記事の内容や専門家の肩書などは2024年7月当時のものです。